クリニック研修レポート【薬剤師 女性 28歳】2015/07
目的
処方箋を手にするまでの医療機関の業務を体感し、処方医の熱意・姿勢・患者への考え・説明を知り、処方箋や薬局での対話では把握できない患者の状態を知ることで日々の業務水準の向上を薬剤師として図るもの。
研修内容
一人一週間、クリニックでの診察、一般病院業務補助を行う。
研修レポート(抜粋)
今回薬剤師として病院での研修を終えて、新たな発見、反省点、これからへの目標など多くのことを得られたと思います。そもそも薬局薬剤師の仕事は処方箋を受け取り、そこから処方解析をすることから始まります。わたしたち薬局薬剤師は、直接カルテを見ることができるわけではないので、情報収集は主として患者さん側からの取得になります。コミュニケーションはもちろんのことですが、診察や検査の内容をすべて事細かに患者さんから聴取していては、負担になってしまいます。
今回研修により、先生のすぐそばで診察や検査の現場に携われたことによって理解が深まり、今後の服薬指導に大きく生かすことのできる経験をたくさんできたと思いました。ドクターがどのような意図で処方するのか、または処方しないのかをわたしたちは少しでも理解するべきなのだと思います。薬の必要性を説明しなければならないことと共に、薬の不必要性についても説明できなければなりません。
また医療従事者として、二次感染やそれに付随する症状、拡散の予防を促す注意もしなければならないと思いました。実際にあった事例では、最近流行している2つのケースでは、①長期にわたる咳症状、②感染性胃腸炎です。
①では、初期は風邪として咳や痰、鼻水が出るケースが多いですが、問題はそこからの悪化を防ぐことです。根本的にしっかり咳を止めておかないと、2週間以上続く咳はもはや風邪ではなく咳喘息の可能性が高くなります。患者さんによってはとりあえずもらった薬を服用したところで、少し改善したら完全に治ったと思って咳がひどくなるまで再診しないこともしばしばあります。悪化させないためにも、咳喘息になる可能性の示唆し、症状が残る際には再度受診勧奨をしなければなりません。
②では、家族の誰か一人が罹患したときは、濃厚接触者である家族全員が罹患する可能性があるので、吐しゃ物などの清掃方法や対処方法の説明により拡散防止を図る必要もあります。
また、既知の薬剤でも使用目的が違うケースもあります。たとえば印象の深かったもののひとつに、石灰沈着性腱板炎で肩痛があった患者さんにガスターが処方されるというケースがありました。適応外にはなりますが、ガスターには石灰化を溶かし、痛みがとるという効果があるというものでした。この効果はPPIにはなく、H2受容体拮抗薬に特異的な作用だそうです。以前は外科的処置が治療法の一環でしたが、文献にもガスターの使用成績の記載があるとのことです。このように日常的になじみのある薬でも違った目的としても使い得る可能性があるということを常に知識として習得する必要があります。
今回の研修では今までなじみのなかった、さまざまな検査にも立ち会うことができました。実際、胃カメラ検査、胃レントゲン検査、大腸の注腸検査などの現場を見学できて、患者さんが実際どんな検査を受けているかを理解することができました。一番印象に残っているのが、再度の胃カメラ検査の患者さんで、食道真菌症が薬剤によって著しい改善したというケースです。もともと食道全体にびっしりと白く真菌があったのに、1ヵ月のジフルカンの服用が著効を示し、検査ではきれいに取れていました。薬剤服用による改善の力を目の当たりにすることができ、薬剤師としてとても快感でした。
1週間の研修を通して、普段の薬局薬剤師の業務では習得できなかったことを多く得たとともに、これからさらに薬剤のことだけでなく、医学全般における自己研鑽を積んでいかなければならないのだと再確認しました。現在、1つの病院だけでなく、さまざまな医療機関にかかり、薬も多くの種類を服用している患者さんが多くいらっしゃいます。わたしたち、かかりつけ薬局の役目として、一元的に管理できるように努めていかなければならないのだと思います。
ただ投薬するだけでなく、患者さんの言葉の端々にある兆候にも注意してさらなる服薬指導を心がけるべきです。それとともに質の良い医療の提供のためにも、ドクターとの医療連携の向上も図っていかねばなりません。
今回お世話になった先生をはじめ、看護師の方々、事務の方々に厚くお礼申し上げます。毎日が色濃く、とても有意義になったのも医院の方々のおかげです。
お忙しい中、丁寧にご指導くださり、本当にありがとうございました。
機会があればそのときはまた是非よろしくお願いします。